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「図書情報の文化史」素描編■
第52回 『三教指帰』(2)
館長 千田
稔氏のエッセイ。前回のイントロがすばらしかったので引用。
以下
書名にいう「三教」とは、儒教、道教、仏教のことである。「指帰」とは、
指意
(おもむき)の帰するところ、つまり究極の真理という意味である。本書は、
序、
巻上、中、下から構成されている。巻上は儒教、巻中は道教、巻下は仏教につ
いて
論じられている。結論は、三教の中で仏教が最もすぐれているとする。
この書の叙述の特色は、ドラマ風に仕立て上げられて、登場人物が語るとい
う手
法をとっている点である。このことも空海の非凡な文才によるものである。序
には
、「亀毛(きもう)先生に登場願って儒教を代表する客人(まろうど)とし、
兎角
(とかく)先生をお願いしてその主人役とした。虚亡(きょむ)隠士に登場願
って
神仙の道に入る道教の教理を述べてもらい、仮名児(かめいじ・仮名乞児(こ
つじ
))をわずらわして世間を出離する仏教の教理を説明してもらい、ともに論陣
をし
いてそれぞれにならずもの蛭公(しつこう・蛭牙公子)をいましめ(るという
構想
の本書を執筆)し)た。」(現代語訳は福永光司。以下特に断らないかぎり同
氏の
訳による)とある。(つづく)