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奈良県の学校教育の総本山の認識度<お疲れ様でした。私は日が変わるまで職場におりました。私の周りのいろんな部署の人間に「知ってるか?」と訊いたら誰1人「知らん」と。文化財担当者に訊いても「ほんま?」。歴史担当者は「盛り土してやるんやったら,地下が守られていいやん…」って??あかん。関心も守る気もなし(;。;)

<@narapress(ならまち通信社)埋立て舗装工事について、国交省の口から発覚した「驚愕の事実」を簡単に言うと、①地下水への影響の検討をしていない ②ユネスコに相談も報告もしてない の2点。 #平城宮跡世界遺産から外されてもおかしくない大スキャンダル。

寮美千子さんのFBから「本日9/27、平城宮跡 の「土色舗装」に抗議のため、国交省の平城分室へ行った。ツイッターで急遽募ったにもかかわらず、25名もの人々が参加。市会議員、県会議員、元知事候補者、世界遺産を守る会の方なども駆けつけてくださった。新聞社も5社が取材に来てくれた。まずは、担当の国交省平城分室の桑田課長の説明を受けた。

「第一次朝堂院の広場整備の工事」は、国交省国営公園として、大極殿の前の草地4万5千平方メートルを舗装する工事で、25日にすでに着手している。完成すれば、近鉄線から大極殿までの、ほぼすべての草地が舗装されることになる。
【土色舗装工事の記者発表用リリース】

国交省側の説明によると、この工事の目的は利用者の利便性であり「草ぼうぼうの湿地で足元が悪いので、歩きやすく」「文化庁が整備した基壇に自由に行き来できるように」することだそうだ。

歩きやすくするだけなら、道をつければいい。4万5千平方メートルもの土地を舗装する必要はない。この草地は湿地なので、尾瀬のように自然を破壊しない道をつける方法もある。

また、国交省のリリースには「来訪者は大極殿を真正面に見て往時の広がりを体感できる」「復原された第一次朝堂院基壇を間近に見られる」とあるが、広がりなら舗装しなくても柱を立てるなどで充分示すことができる。平城宮跡の一部には、遺構の柱の部分に、木を植えて、柱の形に剪定したものがあるが、これは自然と一体化したすばらしいアイデアだ。すでにこんなすばらしい造園技術があるのに、なぜ4万5千平方メートルもの広大な野原を、コンクリ舗装する必要があるのか? 理解しかねる。

また、3Dメガネを使ったヴァーチャル体験をすることも可能だ。この装置を導入すれば、多くの観光客を呼び入れることができるだろう。今回の舗装化の総予算は、3億円ほどになる予定。それだけの予算があれば、3Dメガネの導入も可能だ。

他の方法を検討せずに、ひたすら「土木工事」を目指す国交省のやり方は、まったく時代遅れであり、整備ではなく、自然破壊だ。

しかも、これが、自然破壊に留まらず、文化破壊にもつながるところが、今回の大問題である。平城宮がここにあったのは実際には70年ほど。都でなくなってからすぐに、田畑になった。その後、忘れ去られていたが、江戸後期の北浦定政による研究で、都跡であることが判明。明治期に棚田嘉十郎・溝辺文四郎らが中心となり保存運動を起し、大正10年、平城宮跡の中心部分が「民間の寄金」によって買い取られ、国に寄付され、翌年に「平城宮址」として国の史跡に指定された。以来、田畑は草原や沼となり、自然状態が維持されてきた。つまり、単なる草ぼうぼうの空き地ではなく、人々が身銭を切って必死で守ってきた草地なのだ。

その草地が、地下に眠る遺物を守ってきた。地下水に浸されてきたことで、酸化を免れ、木簡の文字が読めたのだ。発掘現場に行けばわかるが、土から掘り出された木簡はみるみる黒くなっていく。酸化するためだ。これを食い止めるため、埋蔵文化財センターでは、木簡を水に沈めて保管している。さほど、地下水は埋蔵文化財の保存に重要なものだ。

もし、この地下水が枯渇すれば、いまだ未発掘の木簡(発掘は3/1しか終わっていない) が酸化し、読めなくなる。つまり、1300年間地下の保存されてきた大図書館を、わたしたちの世代で「燃やす」ことになる。これは、平成の大焚書に他ならない。

平城宮の中心にある4万5千平方メートルもの広大な湿地に盛り土をして埋め立て、湿地でなくしてしまい、しかもそこにコンクリを張る。当然、水は浸透しない。夏はじりじりと灼かれる。こんな状況で、地下水を確保できるのか。

国交省の平城分室の課長は「問題ないと思います」と語った。地下水脈は北から南に流れるので、ここには北からの水が流れ込む「はずだ」という。だから「たちまちは問題ない」というのだ。「たちまち」とは? 1300年間、地下で保存されてきた遺物に関して「たちまちは問題ない」といった認識しかないのか? 

しかも「問題ないと思います」である。「問題ない」ではない。たとえ課長が「問題ない」と断言したとしても、ほんとうに問題がないかどうかは、実際わからない。やっていなければわからないし、やってみたとして、地下のことはわからないから、遺物に損傷があってもわからない。取り返しの着かないことになる。

ところで、なぜ「問題ないと思います」なのか、その根拠の提示を求めたところ、非常に出し渋った。よくよく問いつめると、なんと、この工事に関して、地下水についての考察はしていないというのだ。なんという暴挙。

平城宮跡は、1998年に「古都奈良の文化財」として東大寺などと共に世界文化遺産に登録された。考古遺跡としては日本初である。その時点で、大極殿はなかった。ただの原っぱだったのだ。それが評価されたのは、地下に眠る遺物が、1300年間、守られてきたからに他ならない。その守り神である地下水の検討もせずに、舗装工事に着手したのである。論外だ。文化破壊そのものである。

ユネスコ世界遺産委員会は、2011年、平城遷都1300年祭のために設置された駐車場を急ぎ撤去するよう、日本政府に求める決議を採択した。また、大極殿の周囲に張り巡らせた修景柵も、実際にはなかったものなので、誤解を招くとして撤去を求めた(ちなみに、修景柵の建設費は、県負担当初の2.5倍の3億円である)。しかし、奈良県も日本政府も、ユネスコのこの勧告になんら対応せず、放置。来年2月1日までに返答をするように言われている。

さて、そこで今回の「土色舗装工事」であるが、ユネスコへ報告したのかと問うと、していないという。駐車場と柵の問題も解決していないのに、報告も相談もせずに、新たに4万5千平方メートルもの土地を舗装するなど、信じられないことが起きている。これでは、いつ世界遺産指定を剥奪されても仕方ないだろう。国際的な視点から見ても、まったくお粗末な、恥ずかしい顛末だ。

国交省は、この工事に当たっての優先事項として「地下の遺物の保存」「自然環境の保護」の2点を挙げたが、あきれかえるしかない。遺物の保存に関しては、地下水の検討もしていないばかりか、ユネスコへの報告もなし。しかも、4万5千平方メートルもの土地を舗装して「自然環境の保護」とは噴飯物である。この土地は、平城宮跡の中心にあり、ここが舗装化されると、緑の中心が抜けてドーナツ状になる。豊かな湿原とその周囲が一体化して、生物多様性を確保しているのだから、ここが破壊されると、この周囲にも自然破壊が及ぶことは必須である。

国交省に「土色舗装」のメリットとデメリットをどう考えるかを訊ねたが「歩きやすくなること」がメリットであり、デメリットは「あえて言えば、緑がなくなり土になること」との返答。その程度の認識しかないことに、言葉を失った。「歩きやすくなること」のために、どれだけの犠牲を払えというのだろう。

田畑であり野原であったからこそ守られた地下遺跡と豊かな生態系。その両方が危機である。工事の記者発表は9/20、奈良新聞に第1報が掲載されたのが9 /24。翌日の9/25から、工事が始まった。市民に衆知もせず、いきなり工事を始め、反対の声を封殺しようという卑劣さを感じずにいられない。あるいは、そんな大問題になるほどのことという認識すらないのか。

田畑となり、草原であったからこそ1300年間守られてきた地下の遺物。それこそが保存の「実績」である。何が科学的かと言えば、1300年の実績を重んじて、環境を変えないことこそが、いちばん科学的なことだ。これにまさるものはない。湿地の埋め立てと舗装工事を、即刻中止するべきである。

国交省との話し合いの帰り、埋め立てられる用地を一周した。広い、ほんとうに広い。ここで月を愛で、虫の音を聞き、また花を愛で、鳥の声を聞きながら、この草原を守ってきた先人たちに思いを馳せ、1300年前をしのぶことのほうが、どれほど文化的か。

「整備」=「コンクリで固める」時代は終わった。草地をコンクリにすれば、温暖化に拍車を掛ける。土埃も舞い、人々の憩いの場とは呼べなくなるだろう。国交省は、いま本当に求められているものを、真摯に考えてほしい。