http://news.biglobe.ne.jp/economy/1129/atp_121129_6995858068.html


遺跡等マネジメント研究集会(第2回)
「パブリックな存在としての遺跡・遺産」
Archaeological Sites and Cultural Heritage in Public
開催趣旨
遺跡や遺産が、研究者や専門家、行政組織の占有物でないことは、いまさら言うまでもない。
その存在は、パプリックなものである。むしろ、パブリックであるということが、遺跡・遺産
のメルクマールを成しているとしても過言ではあるまい。しかし、現代社会において、それらは
如何なる意味においてパブリックなのか、如何なる態様によってパブリックなのか、そして、如
何にしてパブリックとなるのか。そのことを、いま、改めて問い直したい。
歴史的な遺跡ということについて、17 世紀半ばに、父祖伝来の地でこれまで生活した人々を想
起させる記念物の保護に取り組んだスウェーデン王国におけるカール11 世の試みは、国家的な運
動の最も早い事例として知られる。19 世紀後半以降、近代化の進む国々において、自らのアイデ
ンティティの表徴たるさまざまな遺産が失われていくことに対して敏感に反応し、また、種々の
国際的な遣り取りが急速に活発化する中で、国土に包含される意味や価値を高く評価しようとす
る運動が、社会の中に遺跡や遺産を登場させていく大きな契機であったと言える。日本において
は、明治維新とこれに伴う文明開化の文脈において普及した旧弊打破や百事一新の風潮によって
生じた急速で大規模な変容への反動として顕れ、明治4年(1871)の古器旧物保存方、明治30 年
(1897)の古社寺保存法、大正8年(1919)の史蹟名勝天然紀念物保存法などの取組から、昭和
25 年(1950)の文化財保護法へと展開していくこととなる。そして、今日、採択から40 周年を
迎えた世界遺産条約の取組などにも象徴されるように、遺跡や遺産の保護は、個別の国家や地域
において取り組まれてきた固有の運動を超えて、「普遍的なもの」にまで昇華してきた。
しかし、そのことを別の角度から見てみれば、遺跡や遺産の保護が世界的に広く取り組まれる
ようになってから1世紀以上を経てきた中で、それらの取組がより強力に進められれば進められ
るほど、遺跡や遺産は、何か、必要以上に特別なものとして取り扱われるようになって、むしろ、
私たちが日々暮らす具体的な社会の一般から切り離されるように作用してきたということもある
のではないか。すなわち、今日において、公共の遺跡や遺産は、真にパブリックであるのか。
一方、前回の研究集会の主題である「自然的文化財のマネジメント」において、今日の「文化
財」という理解は、人の手によってつくられてきた、いわば、「歴史的な遺産」と、私たちが自然
の環境と考えている中から意思して切り分け、分節した、いわば、「自然的な遺産」との区別をも
ってするのではなく、地域を成り立たせてきた地質基盤の生成と変動、固有の気候と気象、そし
て、風土を構成する地形や土壌、植物と動物、ヒトとその歴史、そこに形成される生活と文化と
いうすべての過程におけるあらゆる節目を象徴し、それらを保護することによって、地域に連綿
と積み重ねられてきた知恵や知識を継承する拠りどころとするものであるということが明らかに
され、また、それは、地域そのもののことを考えることでもあることが示唆された。このような
ことに敷衍して、「地域」というものがさまざまな分節によって人々が意識的にも無意識的にも認
知するハビタットであるとするならば、遺跡や遺産に関わることの本質のひとつは、人々が地域
において、それらをどのように把握し、理解し、感得しているかということによるものである。
遺跡等のマネジメントは、地域社会の具体的な結構とともに構成され、実行されるものである。
そのようなことを踏まえ、この度の研究集会においては、パブリックな存在としての遺跡・遺
産について、ガバナンス、ソーシャル・キャピタル、そして、レジデンスなどの切り口から、そ
の特質を検討するとともに、ナショナル/ローカルの重層的なスケールとさまざまなカテゴリー
に分化する遺跡・遺産への人々のまなざしを通じて、マネジメントの基本的諸事項を確認したい。
奈良文化財研究所遺跡整備研究室
平成24年度 遺跡等マネジメント研究集会(第2回)
a.開催期日:平成24年(2012)12月21日(金)〜22日(土)
b.開催場所:平城宮跡資料館講堂
c.テーマ:「パブリックな存在としての遺跡・遺産」
d.事務局:奈良文化財研究所文化遺産部遺跡整備研究室
e.構成案:
平成24年(2012)12月21日(金)
12:00〜13:00 開場・受付
13:00〜13:05 開会挨拶 小 野 健 吉(奈良文化財研究所文化遺産部長)
【 趣旨説明 】(25 分) (仮)遺跡等における「パブリック」ということについて
13:05〜13:30 平 澤 毅(奈良文化財研究所・遺跡整備研究室長)
【基調講演①】(60 分) (仮)遺跡をめぐるガバナンス
13:30〜14:30 関 雄 二(国立民族学博物館
【 講 演 ① 】(45 分) (仮)ソーシャル・キャピタルとしての遺産
14:30〜15:15 ウーゴ・ミズコ(学習院女子大学
【 講 演 ② 】(45 分) (仮)遺跡・遺産は地域住民にどのように認知されるのか
15:15〜16:00 石 村 智(奈良文化財研究所・国際遺跡研究室)
【休憩】16:00〜16:15
【 討論 ① 】(75 分) 《遺跡・遺産におけるパブリック概念》
16:15〜17:30 座長:松田 陽(セインズベリー日本藝術研究所)+関/ウーゴ/石村/平澤
18:00〜20:30 情報交換会(於:平城宮跡資料館講堂、個人会費制)
平成24年(2012)12月22日(土)
【基調講演②】(60 分) (仮)パブリック考古学の視点:イタリアとイギリスでの取組
9:00〜10:00 松 田 陽(セインズベリー日本藝術研究所)
【事例研究①】(40 分) (仮)マレーシアの事例:マラッカ/ジョージタウンの比較
10:00〜10:40 張 漢 賢(鳥取環境大学
【休憩】10:40〜10:50
【事例研究②】(40 分) (仮)産業遺産の公共性:その価値は何から生じるのか?
10:50〜11:30 岡 田 昌 彰(近畿大学
【事例研究③】(40 分) (仮)SEEDS of FURUSATO:人々の心にある遺産
11:30〜12:10 土 井 祥 子(日本ナショナルトラスト)
12:10〜12:15 講演の要約[事務局(青木達司)]+(質問票回収)
【休憩】12:15〜14:00
【 討論 ① 】(120 分) 《パブリックな存在としての遺跡・遺産のマネジメント》
14:00〜16:00 座長:平澤 毅 + ウーゴ/石村/松田/張/岡田/土井
【参考】研究集会開催実績
■遺跡整備・活用研究集会(2006〜2010 年度)
第1回 平成19 年(2007)1 月25 日(木)・26 日(金)
テーマ「教育面に関する活用」
第2回 平成20 年(2008)1 月25 日(金)・26 日(土)
テーマ「遺跡の保存管理・公開活用と指定管理者制度
第3回 平成21 年(2009)1 月30 日(金)・31 日(土)
テーマ「埋蔵文化財の保存・活用における遺構露出展示の成果と課題」
第4回 平成22 年(2010)1 月28 日(木)・29 日(金)
テーマ「遺跡内外の環境と景観 〜遺跡整備と地域づくり〜」
第5回 平成23 年(2011)1 月21 日(金)・22 日(土)
テーマ「地域における遺跡の総合的マネジメント」
■遺跡等マネジメント研究集会(2011 年度〜)
第1回 平成24 年(2012)2 月16 日(木)・17 日(金)
テーマ「自然的文化財のマネジメント」