☆吉野・五條魅惑体験フェスティバル☆
朗読、映画、ピアノ演奏を交え、多彩に花岡童話を愛でる集い
 2日大淀町あらかしホール

吉野郡大淀町出身の童話作家花岡大学さん(明治42年2月6
日〜昭和63年1月29日)の作品の朗読を聴く「花岡童話を愛で
る集い」(同実行委員会主催)が吉野・五條魅惑体験フェステ
ィバルの一環として同町桧垣本の町文化会館あらかしホールで
、2日、開催され、町内外からの参加者約60人が、映画「春風
の子供たち」上映と花岡氏独自の「仏典童話」朗読を交えた3
部構成による花岡文学の世界に心を寄せていた。昨年に続き2
回目の開催。今年8月6日には花岡さんが住職を務めていた寺で
朗読会が開かれた。

 花岡文学をより多くの人々に伝えたいと情熱を傾ける
高橋成男さんと、花岡さんの弟子で詩人の野呂昶(さかん)さ
んの対話形式による解説を交え、大阪市を拠点に活動している
関西朗読家クラブのメンバー6人が「三時のバス」「海ぞいの
道」「カキどろぼう」「ぎゅうにゅう駅」「がまぼとけ」「義
眼」を朗読。町立大淀緑ケ丘小学校5年生の平田奈々穂さんが
、植田久美子さんのピアノ伴奏とともに代表作の一つ「百羽の
ツル」を朗読、感動を呼んだ。

 野呂さんは花岡さんの『かたすみの満月』を読み、「文学を
するとは心のうちから、そして自己とは何かを問うことである
」という発見を得て花岡さんを京都市伏見区深草の自宅に訪ね
、当時、55歳の花岡さんと27歳の野呂さんの師弟の関係が始ま
った。文化住宅に本に埋もれて暮らす花岡さんからは後光が差
しているようだったと野呂さん。
 花岡さんの仏教精神には慈悲の心がある。他人の幸せを大切
に、他人の喜びを自分の喜びとすること。
また、「100分の2文学論」を唱え、100人の子供がいれば、最
低2人は感性的に優れた子供がいる。
その優れた2人に向けて自分は創作するのだといっていた。そ
れが教師、そして文学者たる心得かも知れない。
今、大半はおもしろおかしい本に満ちているが、こうした姿勢
や作品が、今こそ必要なのではないだろうか。
大多数の興味や関心におもねるのではなく「人生をどう生きる
か、美や真実が入ってこそ文学ではないか」と
解説するとともに、「花岡童話には生と死、殺戮(さつりく)
、欺瞞(ぎまん)といった児童文学とは一見無縁の場面が描か
れている。子供は小さな大人ではない。大人よりも鋭い感性で
人間をみているのであって、そうした感性を書かなくてはなら
ないという信念による。そして表現としては幼年文学は詩とぎ
りぎりの澄み切ったところにある美と文学の結晶。だれでもわ
かる平易な文体と簡潔なストーリーで、最終的には人間の信頼
を大切にする」。
作品のうち、『がまぼとけ』はインドの仏教説話「パンチャタ
ントラ」を消化し、自らの言葉で描いたもので、
平素は粗野な牛飼いが仏陀の教えに聞き入るのを妨げないよう
、牛飼いの杖が自分の体に刺さっても身動きせず、いのちを絶
えたガマガエルの話で、仏教が説く全ての人々の幸せを願い、
自分よりも他者を大切にする「捨身」の精神を説く。『義眼』
小川未明賞受賞作で、芥川作品のような心理ドラマを抉り出
す。

花岡さんは大阪市で生まれ、2歳から16歳までの幼少年時代を
吉野川沿いの大淀町で過ごし、龍谷大学予科から
文学部史学科に学び、本願寺で得度。26歳から27歳までを大阪
南河内郡尼の小学校の代用教員となるとともに童話作家連盟
を結成し、同人雑誌「童話作家」を発行。つづいて大阪市布施
第三小学校訓導として勤務、のちに司馬遼太郎さんの夫人とな
福田みどり(旧姓松見みどり)さんを教えた。翌年、臨時召
集を受けて、奈良歩兵38連隊に入隊。ここで、東大寺の清水公
照師と親交を持ち、以後、終生にわたり交友。2年後の昭和15
年、天王寺中学で2年間教諭、同17年臨時召集で中国を転戦、21
山口県山崎港に復員。翌22年吉野女学校(大淀高等学校)に
勤務、39年までの17年間に、棟方志功の装丁による「花ぬすっ
と」を百華苑から出版、『かたすみの満月』(小川未明奨励賞
)、『ゆうやけ学校(小学館文学賞)と活発な創作活動の傍ら
川村たかし氏らとともに『近畿児童文化』を発刊、また、司
馬遼太郎氏らの寄稿を得て同人誌「吉野風土記」の刊行を続け
た。昭和46年に京都女子大学教授に就任した頃から仏教経典に
題材を求めた<仏典童話>を多数創作。昭和48年からは個人雑
誌「まゆーら」を刊行。 同52年正力松太郎賞、55年、西本願
寺教学助成財団名誉総裁賞受賞。55年佐名伝の梨山に「花岡大
学童話碑」が清水公照東大寺長老の揮毫を得て建立された。
 昭和63年(1988)没後も、各社から復刻版が出される程今も
人気があり、宮沢賢治と並び称される児童文学の開拓者。


参考:
1.殺意、不条理…、子供の鋭い感性描く-花岡童話を愛でる
集い  (2006.9.4 奈良新聞)

2.浄土真宗による花岡文学論集
http://www2.big.or.jp/~yba/QandA/01_04_18.html
3.朗読サークルの動き

《 新規サークル会員募集 》
花岡童話を朗読する会(第1回)
ほのぼのとした温かさを伝えてみませんか
開催日時:平成18年6月23日(金)14:00〜16:00
     ※2回目からは毎月第4金曜日
開催場所:奈良県社会福祉総合センター4階教養文化室
     橿原市大久保町320-11
対象者等:県内在住者30人
会 費 等:1回目のみ無料(2回目以降1,000円)
応募締切:6月15日(木)必着
申込方法:往復ハガキに住所、氏名、年齢、電話番号を記入の
うえ問い合わせ先まで
   
お問い合わせ
〒634-0061 橿原市大久保町320-11
(財)健やか奈良支援財団
担当:大西
TEL 0744-29-0120
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