平城宮跡に出かける。


http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100816-OYT1T00984.htm?from=y10
平城遷都1300年 国の成り立ちを考える機会に(8月17日付・読売社説)
 「あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり」――。

 奈良時代に詠まれた万葉集のこの歌からは、活気あふれる平城京の様子が想像される。

 奈良県で開かれている平城遷都1300年祭は、夏休み中、多くの観光客でにぎわっている。

 奈良市の中心部の一角に原野のように広がる約120ヘクタールの平城宮跡が主会場だ。重要な儀式の場であった第1次大極殿が今年春に復元された。実物大の遣唐使船や歴史体験館なども設けられた。

 広大な宮跡に立つと、日本の礎を築いていった当時の人々の心意気が伝わってくるようだ。

 古代国家の成り立ちや、当時の国際関係などを改めて考えてみるよい機会でもあろう。

 奈良時代と言えば、東大寺の大仏や正倉院の宝物などが思い起こされる。平穏な時代と受け止めている人も多いだろうが、全盛期を迎えていた隣の大帝国・唐を意識しながら、緊張感を持って国家建設が進められた時代だった。

 遣唐使を派遣し、唐の政治制度や文化を取捨選択し、日本の風土に合うものを効率的に取り入れていった。急速な改革は明治維新とも比較される。

 「日本」という国号が定まり、元号制度も確立される中で、飛鳥の藤原京から平城京への遷都が実行された。奈良時代に制定された養老律令は、明治初期まで公家社会の基本法となった。日本の国の骨格は奈良時代に作られたと指摘する歴史家もいる。

 奈良国立博物館では、国宝の東大寺法華堂金剛力士像などが特別展示されている。ここで、秋には正倉院展も開催される。こうした文化財に触れることで、歴史への理解はより一層深まるだろう。

 1300年祭の会場となっている平城宮跡は、明治時代まで田畑の下に埋もれていた。保存の機運が高まったのは、100年前の遷都1200年の時からだ。

 2年前から国営歴史公園になっているが、これほど大きな規模で保存されている古代都市の遺跡は日本では他に例を見ない。

 新しい史跡保存のモデルケースとも言えるだろう。

 平城宮跡は、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産古都奈良の文化財」の一つとしても登録されている。

 1300年祭の終了後は、古代建造物の復元が進められる見通しだ。静かに史跡散策を楽しみながら、歴史を学べる場として整備を進めていくべきだろう。

(2010年8月17日01時22分 読売新聞)