橿原市今井町にてー1

明日香村の県立万葉文化館で開催中の山路融人展のポスターは橿原市今井町の観光案内所他3か所に掲示されている。
その一つである「六斎堂というカステラ屋さんに出向く。
奈良市の県立美術館で開催中の「会津八一」展のちらしを配置しておくのにふさわしい場所であると考えたのと
いつ出かけても、店の飲食コーナーがあいていて、店主に時間があれば適切な応対をしていただき、劇団仕込みの美しい日本語でまっとうな文化談義ができるからである。

かつて一人でやってきてカステラを反片買って帰り、
もっと買うべきだったと友人2人を連れて滋賀県からきたという60代前後の女性3人がいた。
滋賀出身の山路さんの展覧会が京都とはまた違ったユニークな構成であると紹介する。
京都新聞で読みました」「ポスターがありましたね」と勘所を押さえた観光であることも
よくわかる。
「ここからどうやっていけばいいのですか?」うーん、電車で八木西口まで出かけて、
橿原神宮前までいくとバスがあります・・・面倒でありますね。
そして本日は水曜日でお休み日でありました。

続いて、若いカップルが最新号の「SAVY」で紹介されたカステラを食べにやってきた。
ちょっと遅れて蕎麦屋の昼サービスは終わったばかりだったのだ。
まず、このカステラ屋さん至近の案内所「華甍」(はないらか)を訪ねて全体の模型など見たあとで町歩きを
勧める。蕎麦屋が開く午後5時までの時間を過ごす場所がないのが問題な平日の
観光地。
橿原考古学研究所博物館ならば神宮の森を快適に徒歩で散策しながら辿りつける。
埴輪から古代建築までいろいろ楽しめるし、若い人には感動必至の常設展の
充実した内容。この周辺にこじゃれた喫茶店かグルメな店があれば「歩く観光」として
最適の観光交流拠点となるのだが。
やはり、北部で逼塞状態にあるシルクロード博国際交流財団やユネスコアジア文化センター奈良事務所を
このゾーンに移転して、北部の図書情報館に集約されてしまいガランドウ=閉鎖=状態の元県立図書館橿原分館を
新時代に対応する実験的図書館として再生することが南部の知的活性化の秘策であろう。
人がいくら群がっても個人の発見や感動がその町に還元され、対話がなければ、一過性にとどまる。
この店は元劇団員で若いころには平井監督作品「橋のない川」のエキストラ出演、大阪の専門学校で
教師をしていたという特異な経験を持つ。その店のきりりとした構え。のれんの色、素木の棚に並べられた
器の間合いに劇場空間のような気合を最初に感じ、そして、座卓2つの小さな店ながら、訪れた人たちが
対話し「出会い」というドラマを紡ぐのである。そして、図書館は、いつでも誰でも、そこにある本から
新しい発見と出会いを得られる公共の場である。そして、図書情報館が示しているように、情報収集はもちろん、そこから雇用や創業の場となる。